自分が3階層のどこで詰まるかを見極める実践ワーク

「感情処理の3階層、どこで詰まるか」と向き合うための実践は、セルフアセスメントという作業から始まります。本記事で紹介する3つの問いを、今日から1日3分で試せる形でお渡しします。自分の現在地を把握し、必要なら専門家に相談する判断材料を持つための、セルフチェックワークです。

Q1. なぜ「セルフチェック」が、行動を変える最初の一歩なのか

理論編・体験編を読み終えたあと、こんな感覚が残っているかもしれません。

「3階層のどこかで詰まっている、というのは分かった。でも、自分がどこで詰まっているのかは、結局よく分からない」

頭で分かっても、自分の現在地が掴めないのは、あなたの内省が足りないからではありません。

人は、自分のことを直接見ることが難しい生き物です。目は外側を見るために設計されているので、自分自身を見るには、鏡や、自分以外の何かが必要になります。心も同じです。心の中で起きていることを、心の中だけで見ようとしても、ピントが合いません。何か別の枠組みを通してみることで、初めて、自分の状態が映ります。

たとえるなら、車の定期点検に近い感覚です。「自分の車はなんとなく調子が悪い気がする」と感じている時、その不調がどこから来ているのかは、自分では分かりません。けれど、整備工場でブレーキ・タイヤ・エンジン・電装系という決まった枠組みに通すと、「ブレーキパッドが減っている」「バッテリーが弱っている」「タイヤの空気圧が低い」と、具体的な場所と状態が見えてきます。枠組みが、見えなかったものを見せてくれます。

感情処理の3階層も、同じように一つの枠組みです。この枠組みに自分を通すと、「気づきは育っている」「許しが弱い」「選び直しの技術は持っているが、許しが入っていないので機能していない」と、自分の状態が具体的に見えてきます。

これからお渡しする3つの問いは、このセルフチェックのための具体的な手順です。

Q2. セルフアセスメントという考え方

3つの問いをご紹介する前に、ひとつだけ言葉を共有させてください。

これから紹介する3つの問いは、すべて「自分の現在地を、自分で見立てる」ための作業です。これは、車の点検に近いものがあります。

車を整備工場に持っていく前に、自分でできる点検があります。タイヤの空気圧、オイルの汚れ、ライトの点灯。これらを自分で見ておくと、整備工場で「ここを見てほしい」と的確に伝えられます。何も点検せずに「なんか調子が悪い気がする」とだけ伝えるより、ずっと早く問題が解決します。

感情処理も同じです。専門家に相談する前に、自分で大まかな点検をしておくと、相談の効率が大きく変わります。「私はだいたい気づけるが、許しに違和感がある」と伝えられれば、相談相手はそこに集中して関わることができます。何も整理せずに「とにかくしんどい」とだけ伝えるより、ずっと早く具体的な対応に進めます。

この自分の感情処理がどこで詰まっているかを見立てる作業を、シリーズ内では一つの言葉で呼んでいます。

【セルフアセスメント】(せるふあせすめんと / Self-assessment)とは、自分の感情処理がどこで詰まっているかを見立てる作業のことです。

ポイントは、これは完璧な見立てではない、ということです。自分で点検した結果と、整備工場で見た結果は、ずれることがあります。それは正常です。自分の点検は、専門家との相談を効率化するための大まかな見立てに過ぎません。けれど、その見立てがあるかないかで、その後の進み方が大きく変わります。

これからお渡しする3つの問いは、過去の具体的な場面を一つ思い出して、その場面に対して順番に問いかけるためのものです。

Q3. 今日からできる3つの問い

まず、ここ1〜2週間以内に、感情に振り回されたと感じる場面を、一つだけ思い出してください。怒鳴ってしまった会議、家族にきつく当たってしまった夜、SNSで嫉妬を感じた朝。どんな場面でも構いません。その場面を、頭の中に置きながら、3つの問いに順番に答えていきます。

問い1:「その場面で、自分の感情の名前を言えたか?」(第一階層・気づくの点検)

その場面のことを思い出して、自分にこう問いかけてください。

> 「その瞬間、自分の中で動いていた感情に、名前をつけられただろうか?」

たとえば、会議で怒鳴ってしまった場面なら、怒鳴る瞬間の自分の中で動いていたのは「怒り」だったのか「焦り」だったのか「失望」だったのか「不安」だったのか。

判断の基準は、こうです:

  • ○ 育っている:その瞬間、何を感じているか、ほぼリアルタイムで名前をつけられた
  • △ 育ちかけ:その時は分からなかったが、後から思い返すと名前がつけられる
  • × 詰まっている:今思い返しても、何の感情だったのか言葉にならない、もやっとしている

「△」または「×」だった方は、第一階層(気づく / Self-awareness)で詰まっている可能性があります。詳しくは「Self-awarenessとは|医師が解説する感情に気づく力の正体」と「感情に気づく力を鍛える3つの問い|Self-awarenessを育てる実践ワーク」をご覧ください。

問い2:「その感情を、責めずに『あるね』と言えたか?」(第二階層・許すの点検)

問い1で感情の名前がつけられた方も、つけられなかった方も、次に進みます。

その場面のことを思い出して、こう問いかけてください。

> 「その感情を持った自分に対して、責めずに『そういう感情を持つこともあるね』と言えただろうか?」

たとえば、嫉妬を感じた朝なら、嫉妬を感じている自分に対して、「未熟だ」と責めていたか、「人として誰でも感じるね」と言えていたか。

判断の基準は、こうです:

  • ○ 育っている:感情を持った自分に対して、責めずに「あるね」と認めることができた
  • △ 育ちかけ:後から思い返すと「あれは責めなくてよかった」と思えるが、その時は責めていた
  • × 詰まっている:今思い返しても、感情を持った自分を責めたい気持ちが強い

「△」または「×」だった方は、第二階層(許す / Self-acceptance)で詰まっている可能性があります。詳しくは「Self-acceptanceとは|医師が解説する感情を許す力の意味」と「感情を許す力を鍛える3つの問い|Self-acceptance実践ワーク」をご覧ください。

問い3:「感情を持ったまま、別の行動を選び直せたか?」(第三階層・選び直すの点検)

問い1・2が進んだ方は、最後にこう問いかけてください。

> 「その感情を持ったまま、いつもと違う行動を選び直すことができただろうか?」

たとえば、怒りを持ったまま、怒鳴る代わりに『ちょっと考えさせて』と言えたか。焦りを持ったまま、急かす代わりに『時間を見直そう』と提案できたか。

判断の基準は、こうです:

  • ○ 育っている:感情はあったが、いつもと違う行動を選べた
  • △ 育ちかけ:選び直そうとしたが、最後に元の行動が出てしまった
  • × 詰まっている:選び直すという発想自体が、その瞬間にはなかった

「△」または「×」だった方は、第三階層(選び直す / Self-regulation)で詰まっている可能性があります。詳しくは「Self-regulationとは|医師が解説する感情を選び直す力」と「感情を選び直す3つのステップ|Self-regulation実践ワーク」をご覧ください。

3つの問いに答えると、自分が3階層のどこで詰まっているかの大まかな見立てが手に入ります。最も詰まりが深い階層が、まず取り組むべき場所です。複数の階層が「△」「×」になっている方は、最も下の階層から順に立て直していくのが、結局は早道です。

ある経営者の方は、面談の場で、「自分はずっと選び直しが弱いと思っていたが、3つの問いに答えてみたら、実は許しの段階で深く詰まっていた。許しを訓練し始めたら、3ヶ月後に選び直しが自然に動き始めた」と話されました。これは、面談の場では何度かうかがってきた変化のパターンの一つです。※個人の感想であり、効果を保証するものではありません。

Q4. 続けるためのコツ、そして次に進むために

完璧な見立ては要らない

3つの問いに答えるとき、「自分は本当はどうなんだろう」と完璧を求めると、いつまでも答えが出ません。

「だいたいこんな感じ」という大まかな見立てで構いません。違和感が残ったら、別の場面で再度同じ問いに答えてみてください。場面が変わると、見えてくる詰まりも変わります。何度か試すうちに、自分の傾向が見えてきます。

詰まりは、複数あって当然です

「気づきも△、許しも×、選び直しも×」となる方も、いらっしゃいます。それは、感情処理全体が静止している状態です。決して珍しくありません。

複数の階層に詰まりがある場合は、まず一番下の階層(気づく)から立て直すのが、結局は早道です。下の階層が安定すると、上の階層が自然に動き始めることがあります。

独りで進めるのが難しいと感じた時は

ここまでのセルフチェックを試してみても、「自分の現在地がはっきりしない」「分かったところで、独りで動かす自信がない」と感じる方もいらっしゃると思います。それは、セルフチェックの精度が足りないからではありません。

長年染み込んだ感情処理のパターンは、独りの内省だけで動かすには、岩が大きすぎることがあります。整備工場の話に戻ると、自分でできる点検には限界があります。エンジンの内部のように、専門家の手を借りないと見えない場所もあります。

シリーズ内には、3階層のそれぞれの理論編・体験編・実践編をご用意しています。「感情処理の3階層とは|医師が解説するどこで詰まるかの見極め方」「気づいたのに動けない、許せたのに選び直せない感覚」もあわせてご覧ください。シリーズ核心「待つ筋力を育てる最終実践|やえこふクリニックの選択肢」では、3階層の上に重なる「待つ」が扱われています。

それでも独りで進めるには重い、と感じる時は、専門家と一緒に整理する選択肢があります。


経営者・医師・リーダーのための面談という選択肢

やえこふクリニックでは、経営者・医師・リーダーの方向けに、Dr.EKO博士(医師・医学博士)が直接対応する個別面談をお受けしています。3階層のどこで詰まっているかを、専門家と一緒に整理していきたい方のための場です。

「セルフアセスメントを試したけれど、自分の現在地がはっきりしない」「詰まりが複数ありすぎて、何から手をつければよいか分からない」「独りで進めてきたけれど、外側からの視点が欲しい」。そういう方のための予約フォームを、下記にご案内します。

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まとめ

  • セルフアセスメント(せるふあせすめんと / Self-assessment)とは、自分の感情処理がどこで詰まっているかを見立てる作業のことです
  • 3つの問い:① 感情の名前を言えたか(第一階層) ② 責めずに「あるね」と言えたか(第二階層) ③ 感情を持ったまま別の行動を選び直せたか(第三階層)
  • 直近1〜2週間の具体的な場面を一つ思い出して、その場面に対して順番に問いかけます
  • 複数の階層に詰まりがある場合は、最も下の階層から順に立て直すのが早道です
  • 完璧な見立ては要りません。専門家との相談を効率化するための大まかな見立てで十分です
  • 独りで進めるのが重い時は、専門家と一緒に整理する選択肢があります

監修:Dr.EKO博士(医師・医学博士・株式会社ヤエコフ代表)

免責事項: 本記事は、メンタル思考トレーニングおよびセルフケアに関する情報提供を目的とした内容です。医療行為・心理療法ではありません。重い症状が出ている方は必ず医療機関を受診してください。

最終更新:2026年5月

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Dr.EKO博士

Dr.EKO博士(YAEKOFU)

医師・医学博士 / やえこふクリニック院長

医師として保険診療の現場に立ちながら、ある問いが消えませんでした。「今出ている不調を取り除くだけで、その人は本来の自分に戻れているのか」。スタンフォード大学でEIを学び、分子栄養療法・スラトレ®を統合した独自のアプローチを確立。完全自費・マンツーマンで、エグゼクティブ・医師・リーダーの「本来の自分への回復」を支援しています。

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