整体やカイロは行っても大丈夫?施術の注意点とリスクを整形外科専門医が解説


12月12日

整体やカイロ:施術に関する注意点

本日は「整体やカイロに行っても大丈夫ですか?」というご質問にお答えします。

結論はひとつです。
「信頼できる、経験豊富な良い治療家の先生を見つけてください。」

整体・カイロは“危険”だから行くな、という単純な話ではありません。
施術者の技術差・知識差が大きく、かつ医療との連携体制が日本では不十分なため、
「誰に施術を受けるか」がすべて なのです。

整形外科専門医とは?

医師国家試験合格後、7年間の専門研修を経て、難関の専門医試験に合格した医師です。
一般医から質問を受け、セカンドオピニオンの提供や指導を担う立場にあります。

当院院長(私)は研修医指導医の資格も有しています。
この立場を前提に、整体・カイロ施術についての重要な見解を共有します。

実際にあった訴訟事例:五十肩で骨折

50代男性の五十肩に対し、整体院での「強引」と認定された施術によって骨折が発生したケースをご紹介します。
私はこの方の手術を担当し、術後は順調に回復されました。

しかしその後、整体院に対する訴訟に関わることになりました。
裁判では
「施術が強引であった」
と判断され、患者さんが勝訴しました。

この一件は、施術者の知識・技術・判断の重要性を痛感する出来事でした。

なぜトラブルが起こるのか?

日本では、

  • 医療

  • 整体

  • カイロ

  • 鍼灸
    などの医療類似行為が 連携していません。

海外のように、
検査→医師の指示箋→治療家の施術→フィードバック
という仕組みが存在しないため、安全性に大きな“個人差”が生まれます。

日本国内では、長期的な施術の影響を科学的に調べる研究も非常に難しく、資金も確保できません。
私は研究医として大規模研究を進めようとしましたが、
「前例がないからできない」
という理由で断念した経験があります。

スタンフォード大学では“当たり前”に存在した連携

私が所属していたスタンフォード大学PM&Rスポーツ診療部では、
医師と治療家が当たり前のように連携していました。

  • 検査

  • 評価

  • 指示箋

  • 施術

  • 情報共有

この循環があることで、治療家は安全に施術ができ、患者さんはより良い結果を得られます。

一方、日本にはこの仕組みがありません。

日本の現状でできる最善の方法とは?

現状の日本では、
信頼できる施術者を選ぶこと が何より重要です。

そして最も大切なのは、
自分の身体を簡単に他人へ委ねないこと。
自分の身体に真剣に向き合う姿勢です。

整体施術に関する重要な注意点(引用)

以下は国民生活センターや厚生労働省による公的情報です。

● 主なトラブル事例

  • 腰痛やしびれの悪化

  • 頚椎捻挫

  • 胸部・背部の骨折(特に肋骨)

  • 脊髄・神経損傷

  • 打撲・挫傷

  • 1か月以上治療が必要になったケース:18.1%

● 頚椎スラスト法の危険性

厚生労働省は次のように警告しています:

「頚椎への急激な回転伸展操作(スラスト法)は危険が大きいため禁止が必要。」

● カイロプラクティックの禁忌(厚生労働省)

  • 腫瘍

  • 感染症

  • リウマチ

  • 心疾患

  • 椎間板ヘルニア

  • 変形性脊椎症

  • 脊柱管狭窄症

  • 骨粗鬆症
    など、明確な診断がある場合は施術不適応です。

最後に

整体・カイロは良い施術者に出会えれば、身体の助けになることもあります。
しかし、“誰でもできる技術ではない”ということを、ぜひ知っておいてください。

本質はシンプルです。
自分を大切にすること。
身体の声に耳を傾けること。

それがすべての健康の土台です。

Dr.EKO博士

医師・医学博士/産業医・PM&R研究医

整形外科専門医。スタンフォード大学研究医としてPM&R分野を研究後、現在は〈スラトレ®〉を中心に、ウェルネスと自己変容を支援するトレーニングおよびコンサルティングを提供中。上質な暮らしを望む方に向けた「YAEKOFU」では、人生を再設計する深い対話と伴走を行う。

▶︎ 株式会社ヤエコフやえこふクリニック