手術しない医師の誕生——12年のメスを置いた整形外科医の問い

この記事のポイント:整形外科の第一線で約12年、数多くの手術を担当してきた医師が「手術で良くなる。でも、また再発する。これは本当の解決なのか」という問いを抱え、スタンフォード大学PM&R部門での研究に向かいました。視力の限界でメスを置いた外科医が見つけた「もう一つの医療」の形を、年末前の振り返りのテーマとして整理します。

外科医として12年、手術の最前線にいた日々

整形外科の第一線で、約12年にわたり数多くの手術を手がけてきました。

もともと幼い頃から強度の近視を抱えており、外科医になるために視力の手術を受けた経験があります。限られた時間の中で全力で研鑽に打ち込み、多くの患者さんが術後に素晴らしい回復を遂げていく奇跡を見守ってきました。

手術は、人を救う最も直接的な手段のひとつです。骨折の整復、関節の修復、腱の再建——目の前で、人の機能が取り戻されていく瞬間に立ち会う。これは、医師として何物にも代えがたい経験でした。

キャリアの中で芽生えた疑問

しかし、キャリアを積み重ねる中で、ある疑問が心に残るようになりました。

「手術で良くなる。でも、また再発する。これは本当の解決なのか?」

何度も同じ患者さんを手術することがありました。手術自体は成功している。患者さんも感謝してくださる。しかし数年後、別の部位で同じような問題が起こる——。

これは技術の問題ではありません。「症状を取り除くこと」と「根本を変えること」は違うという現実に向き合わされる経験でした。

視力の限界で、メスを置くことになった日

順調なキャリアとは裏腹に、視力の限界は予定よりも早く訪れました。

10年ちょっと経ったところで、緻密で精密な作業ができなくなり、外科医のキャリアに終止符を打ちました

外科医として、最も油が乗った時期に手術を続けられなくなる——これは、医師としてのアイデンティティを根底から揺さぶられる体験でした。

そんなとき、以前担当した患者さんの言葉がふと蘇りました。

「もし手術をせずに良くなる方法があるのなら、それほど嬉しいことはない。先生ならできるでしょ」

そして、医師を志した頃の想いがよみがえりました。人が本来持っている回復力を引き出し、薬や手術に頼らず根本的に改善する策を届けられる医師になりたかった——そのことを、自分でも忘れていたのかもしれません。

2016年、スタンフォード大学への挑戦

本来なら挫折であるできごとが、希望に変わりました。

国内で健康科学スポーツ医学博士号を取得した同年、2016年に渡米。日本人として初めて米国スタンフォード大学病院のPM&R(Physical Medicine and Rehabilitation)スポーツ医学診療部にて研究に従事しました。

この研究は、米国最大のスポーツ医学会の研究賞受賞にチームを導く成果となりました。

スタンフォードで実感したこと

スタンフォードで最も印象的だったのは、医療の前提そのものでした。

「医師が伴走することで、人は自分の力で回復し、人生を変えられる」

この確信を、目の前の症例の積み重ねの中で、言葉ではなく体感として得ることができました。

それは、日本で信じていた「医療は医師が治すもの」という前提とはまったく違う発想でした。

  • 医師は主役ではなく、伴走者
  • 治すのではなく、自然治癒を支える
  • 症状ではなく、人全体を見る
  • 急性期だけでなく、長期の機能を守る

この発想の転換を日本でも再現したいという思いから、クリニック開設の構想が始まりました。

「手術しないクリニック」が目指すもの

手術しない医療を選ぶということは、従来の医療を否定することではありません

手術が必要な状態であれば、迷わず専門の医療機関に紹介します。手術は人を救う強力な手段です。

ただし、手術しなくてもいい状態を、手術に至る前に整える——この領域が、日本では十分にカバーされていないのです。

対象となる思いを持つ方

  • できるだけ薬を使わずに体調を整えたい
  • 手術を受けずに慢性的な痛みを改善したい
  • 再発しにくい身体をつくりたい
  • 精神的にも安定し前向きに生きたい
  • 自分の健康を自分で守れるようになりたい

これらの思いに応える解決策は、「治す医療」とは異なる形が必要です。

医師キャリアの転機から学んだ3つのこと

1. 専門性を失うことが、新しい可能性を開く

手術ができなくなったことは、確かに大きな損失でした。しかしそれは、「治す医療」を超えて「整える医療」を考えるきっかけにもなりました。

2. 問いが残り続けるとき、答えは必ずある

「これは本当の解決なのか」という問いを持ち続けたからこそ、スタンフォードで答えにたどり着けました。違和感を放置しないことが、道を開きます。

3. 医師もまた、自分を整える必要がある

医師は、自分の心身を後回しにする文化の中で働いています。しかし、医師が自分を整えることで、患者への関わり方も変わる——これは、自分自身の体験から学んだ真実です。

11月——一年の締めくくりに振り返る「問い」

年末前の11月は、一年を振り返る時期です。次のような問いに、自分の言葉で答えてみてください。

  • 今年、自分の健康とどう向き合ったか
  • 身体の不調を「治してもらう」で終わらせていないか
  • 何度も繰り返す不調の「本当の原因」に向き合ったか
  • 来年、どんな医療との関わり方をしたいか

これらは、健診結果を受け取ったあとに立ち止まって考えるべき本質的な問いです。

まとめ——「手術しない医療」という選択肢

  • 12年の外科医経験から生まれた「本当の解決とは何か」という問い
  • 視力の限界でメスを置いたことが転機に
  • スタンフォードで「伴走する医療」の確信を得た
  • 「手術しない」は「手術を否定する」ではなく「手術に至る前を整える」
  • 年末は自分の医療観を振り返るタイミング

医師としての半生を振り返って言えるのは、「治す」だけが医療ではないということです。整える、守る、伴走する——これらもまた、医療の重要な形です。健診のあと、自分に合う医療の形を考えてみませんか。


※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・診断の代替ではありません。手術を検討する場合は、必ず専門医療機関で相談してください。

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最終更新:2026年4月

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Dr.EKO博士

Dr.EKO博士(YAEKOFU)

医師・医学博士 / やえこふクリニック院長

医師として保険診療の現場に立ちながら、ある問いが消えませんでした。「今出ている不調を取り除くだけで、その人は本来の自分に戻れているのか」。スタンフォード大学でEIを学び、分子栄養療法・スラトレ®を統合した独自のアプローチを確立。完全自費・マンツーマンで、エグゼクティブ・医師・リーダーの「本来の自分への回復」を支援しています。

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