ジムも整骨院も効かないとき——「これだけやればOK」思考の罠

この記事のポイント:「ジムに通っているのに」「整骨院にも行っているのに」——それなのに良くならない原因は、「これだけやればOK」という単一解決思考にあるかもしれません。SNSやYouTubeで「これさえやれば」系の情報が氾濫する今、一つの手段だけに頼る発想の限界と、統合的視点の必要性を医師の立場から整理します。

「これだけやっているのに良くならない」——その努力、空回りしていませんか

「これだけやっているのに良くならない」——そう感じている方は少なくありません。

ジムに週2回通っている。整骨院にも月4回行っている。ヨガも続けている。それでも体の不調が改善しない——。

それは、あなたの努力が足りないのではありません。「見えていない視点」があるからかもしれません。

SNS時代の「これさえやればOK」思考の罠

かつて流行した「○○ダイエット」のように、「これさえすれば健康になれる」という考え方は今も根強く残っています。

最近では、YouTubeやSNSに場を移し、「これだけやればOK」という情報が簡単に広まるようになりました。

  • 「1日5分のこのストレッチで腰痛が消える」
  • 「この食品を食べるだけで血圧が下がる」
  • 「この姿勢を守れば肩こりが消える」

これらの情報が全て間違っているわけではありません。しかし、一つの手段だけに頼る考え方は、解決が長引いたり効果が出にくくなる原因になります。

何ヶ月も通って望む成果が出ない場合、「何かが足りていない」可能性が高いのです。

不足している「2つの視点」

視点1:心と身体の同時アプローチ(セットケア)

心に強いストレスや悩みを抱えていると、次のような身体症状として現れることは少なくありません。

  • 胃痛・胃もたれ
  • 不眠・寝つきの悪さ
  • 倦怠感・慢性疲労
  • 動悸・息苦しさ
  • 肩こり・腰痛の悪化

身体だけのアプローチでは限界があり、心も一緒に整える必要があるのです。

視点2:全体をつなぐ「総監督」的存在

整骨院、整体、整形外科、マッサージ、ジム、ヨガスタジオ——どれも専門的で優れています。しかし、患者さん本人が何をどう組み合わせるかを自力で判断しなければならないのが、日本の現実です。

個々のプレイヤーは優秀でも、全体を見る監督がいないチームは勝てません。健康管理も同じです。

世界には存在する「PM&R」という診療科

世界にはPM&R(Physical Medicine and Rehabilitation)という診療科が存在します。身体の回復と再生を総合的に監督する医師の専門領域であり、欧米では広く知られた仕組みです。

しかし、日本にはこの「総監督」の視点を担う仕組みが存在していません。

厚生労働省のデータでも、男女問わず訴えの多い症状1位・2位は「肩こり」と「腰痛」。25年以上にわたり改善されていない背景には、PM&R的な視点の欠如が関係しているといえます。

スタンフォード大学スポーツ診療科の連携モデル

参考になるのが、スタンフォード大学スポーツ診療科の仕組みです。選手1人に対して5〜6名の専門家が連携し、評価・治療を行います

  • PM&R医師(総監督)
  • 整形外科医
  • 理学療法士
  • ストレングスコーチ
  • 栄養士
  • スポーツ心理専門家

「誰か1人に任せる」ことを避けるのが特徴です。日本の「患者が自分で選ぶ」スタイルとは、根本的な違いがあります。

自分で「総監督」を務めるための視点

日本にPM&Rがないからといって、諦める必要はありません。自分自身が総監督の視点を持つ——これは可能です。

1. 症状を「身体」「心」「環境」の3軸で整理する

腰痛が続くなら、身体の状態(筋力・柔軟性)、心の状態(ストレス・思考)、環境(姿勢・デスク・通勤)の3軸で書き出してみる。多くの場合、原因は3軸すべてにまたがっているものです。

2. 通っている先生に「他に何をしているか」を伝える

整骨院の先生に「実はヨガも始めた」「ジムでこんな運動をしている」と伝える。情報を1つに集約することで、アドバイスの質が上がります

3. 「効かない」と感じたら3ヶ月でレビューする

同じことを6ヶ月以上続けて変化がないなら、アプローチを変えるべきサインです。惰性で続けるのは投資ではなく消費です。

4. 統合的視点を持つ相談相手を1人確保する

全ての専門家と関わる必要はありません。全体を俯瞰して意見をくれる人を1人持つ。かかりつけ医、信頼できる先輩、あるいは統合医療に理解のある医師など。

まとめ——単一解決思考を捨てる

  • 「これだけやればOK」は情報消費の罠
  • 身体だけでなく、心と環境も同時に見る必要
  • 世界標準のPM&Rが日本にはない現実
  • 「誰か1人に任せる」より「自分が総監督になる」発想へ
  • 3ヶ月の変化レビューで惰性から抜け出す

身体の不調が続くとき、それは単なる運動不足や年齢のせいではないかもしれません。「心と身体のつながり」と「総合的に支える視点」——これを取り入れることで、長年取れなかった不調への突破口が見えてくる可能性があります。


※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・診断の代替ではありません。慢性的な不調や強い症状がある場合は、必ずかかりつけ医または専門医にご相談ください。

▶ 関連情報
「健診のあと」ブログでは、経営者・医師・アスリート向けに健康と思考の両面から情報を発信しています。トップページから他の記事を見るDr.EKOへの初回面談のご予約・お問い合わせはこちら

最終更新:2026年4月

この記事をシェア

Dr.EKO博士

Dr.EKO博士(YAEKOFU)

医師・医学博士 / やえこふクリニック院長

医師として保険診療の現場に立ちながら、ある問いが消えませんでした。「今出ている不調を取り除くだけで、その人は本来の自分に戻れているのか」。スタンフォード大学でEIを学び、分子栄養療法・スラトレ®を統合した独自のアプローチを確立。完全自費・マンツーマンで、エグゼクティブ・医師・リーダーの「本来の自分への回復」を支援しています。

関連記事

読み込み中...