こんな医療をしたくて医師になったわけじゃない — 医療スタッフが疲弊する構造的理由

この記事のポイント:Dr.EKO博士(整形外科医・医学博士)が、診療報酬の減額で疲弊する日本の医療現場の実態と、私たちが今どう向き合うべきかについてお伝えします。

医療スタッフが「疲れきって」いる理由

「先生、大丈夫ですか?」「看護師さん、ずっと動きっぱなしですね」──患者さんからこんな声をいただくことが増えました。実際、医療スタッフの多くが“限界の一歩手前”で働いています。

その背景には、国が決める診療報酬制度と、それに起因する過労の実態があるのです。

医療は「国が値段を決める世界」

診療報酬という定価制度

医師が行う診療には、すべて「診療報酬」と呼ばれる定価がついています。たとえば整形外科の一例では、関節腔内注射が80点(=800円)、トリガーポイント注射も80点(複数部位でも1日1回のみ)、リハビリ1回(20分)で最大185点(=1,850円)です。これらの点数が年々引き下げられていることが、医療機関の収入減や倒産に直結しています。

データで見る診療報酬の減額推移(2010年→2022年)

【1】骨折治療
骨折非観血的整復術(四肢):1,000点→850点(15%減)/骨折観血的手術(四肢):3,000点→2,700点(10%減)

【2】注射
関節腔内注射:100点→80点(20%減)/トリガーポイント注射(1部位):100点→80点(20%減)

【3】MRI検査
MRI撮影(四肢):1,500点→1,350点(10%減)

【4】リハビリテーション
運動器リハビリテーション(Ⅰ)(1単位=20分):205点→185点(約10%減)

備考:データは厚生労働省診療報酬改定資料(2010〜2022年)に基づく参考値であり、施設基準や加算により変動する場合があります。

診療報酬が下がると、何が起こるのか?

1人当たりの診療時間が犠牲になる

想像してみてください。かつて1,000円で評価されていた医療行為が100円になったとしたら──医療機関はどうやって経営を維持すればよいのでしょうか?答えはひとつしかありません。1人の患者に10分かけていた診療を、1分で“さばく”しかなくなるのです。質を落とすか、数をこなすか。究極の選択です。

医療は資本主義ビジネスではない

「単価が下がるなら無理に働かず収益を抑えればいい」「不要な人材を整理すれば効率的だ」といった無機質な意見を耳にすることがあります。しかし、医療は単なる資本主義ビジネスではありません。

私たちにとって、共に働くスタッフは“従業員”ではなく、“同士”です。家族以上、でもそれとは少し違う。「人を良くする」ことに全力で向き合い、ときに自分の健康や時間を犠牲にしながら共に歩んできた仲間を、ただの「時給いくらの労働力」として見ることはできません。

そういう想いと信念が、日本の医療の質を支えています。日本の医療は世界一です。日本の医療人も、間違いなく世界一なのです。「1,000円払ったなら1,000円分だけ優しくしてあげる」──そんな損得勘定でゆがめられた倫理観で行われる医療を、誰が本当に望むでしょうか?

現場の実態:ベルトコンベア型医療と「馬車馬」の働き方

データで見る医療スタッフの過労

医師も、看護師も、リハビリスタッフも、まるで流れ作業の一部のように動き続けなければならない。予約で埋まった時間を一秒たりとも無駄にできない──要は、馬車馬のような働き方です。

厚労省2023年調査によると、勤務医の約40%が過労死ライン(年間960時間超)を超えて働いており、約10%がその2倍(1,860時間超)、1.6%は3倍(2,880時間超)に達します。国内調査では、医師の20〜50%がバーンアウト症状を経験しているとされます。

医学部で誓った理想とのギャップ

医学部の卒業式で、仲間たちはこう語っていました。「良い医者になりたい」「誰かの力になりたい」「目の前の命を助けたい」──誰も「馬車馬のように働く」なんて夢見ていませんでした。でも今、現場には理想を貫く余地がないのです。

医療の"原点"が失われる

望んでいるのは給与ではなく「丁寧な診療」

私たちは「もっと給料を上げてくれ」と言いたいのではありません。もっと丁寧に診療がしたい、一人ひとりの患者さんに向き合いたい、大切な命にちゃんと時間を使いたい──でも、それをするための「制度」がない。なぜなら、制度が「効率化」や「点数稼ぎ」にすり替わっているからです。

効率と点数で壊される医療

医療とは本来「人と人が向き合う営み」です。しかし今、その価値が「点数」や「効率」でしか評価されない時代に突入しています。本当に大切な医療、本当に必要なケアは、“収益性が低い”という理由で、どんどん隅に追いやられています。

これからの医療との向き合い方

だからこそ──私たちは“自分の健康”を、自分で守れる存在になっていく必要があります。「体調を崩してから病院へ行く」のではなく、「崩れる前から支えてくれる存在」に出会っておくこと。それが、これからの医療との向き合い方なのかもしれません。

私たちのクリニックは、あなたが「まだ元気なうちに、安心して立ち寄れる場所」でありたいと願っています。もしこの記事が少しでも心に響いたなら、ぜひご自身や大切な人の健康について思いを巡らせてみてください。

まとめ

今、医療の原点が壊れつつあります。その影響は、いずれ私たち自身の身に返ってくるかもしれません。だからこそ、「点数」ではなく「あなたの健康」を守る場所との出会いを大切にし、日々の暮らしの中で自分の健康を育てていく視点を持つことが、これからの時代を安心して生き抜く土台になります。

参考リンク

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※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・心理療法ではありません。個人の感想であり、効果を保証するものではありません。
最終更新:2026年4月

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Dr.EKO博士

Dr.EKO博士(YAEKOFU)

医師・医学博士 / やえこふクリニック院長

医師として保険診療の現場に立ちながら、ある問いが消えませんでした。「今出ている不調を取り除くだけで、その人は本来の自分に戻れているのか」。スタンフォード大学でEIを学び、分子栄養療法・スラトレ®を統合した独自のアプローチを確立。完全自費・マンツーマンで、エグゼクティブ・医師・リーダーの「本来の自分への回復」を支援しています。

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