眠れない夜の正体は「ぐるぐる思考」——生活習慣改善だけでは届かない不眠
この記事のポイント:厚生労働省の調査によると、日本人の約5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているとされています。光、運動、食事など生活習慣の改善だけで解決しない不眠の背景には、止まらない反すう思考「ぐるぐる思考」があることが少なくありません。冬の底である2月に見直したい、不眠の本当の原因と対処の方向性を整理します。
生活習慣の改善だけで解決しない不眠がある
不眠対策といえば、まず挙げられるのが生活習慣の改善です。
- 就寝前のスマホを減らす
- 毎日同じ時間に寝る・起きる
- 適度な運動を日中にする
- カフェインを午後に摂らない
- 寝室の温度と光を整える
これらは確かに重要です。厚生労働省の調査によると、日本人の約5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているとされており、生活習慣の見直しで改善する方も少なくありません。
しかし、これらを完璧にやっても眠れない人が存在します。特に40代以上のビジネスパーソンや医療従事者では、不眠が慢性化しているケースが目立ちます。
その原因は、頭の中で止まらない「ぐるぐる思考」にあるのかもしれません。
「ぐるぐる思考」とは——反すう思考の正体
ぐるぐる思考は、心理学では反すう思考(rumination)と呼ばれる状態です。同じことを延々と繰り返し考えてしまい、結論が出ないのに止められない思考パターンを指します。
ベッドに入ると、こんな声が頭の中に響きませんか。
- 「明日これをしなきゃ」
- 「昨日のあれはまずかったかな、大丈夫かな」
- 「同僚や上司、後輩は嫌な気持ちになっていないかな、怒っていないかな」
- 「あのプロジェクト、どう進めるべきか」
- 「もし失敗したらどうしよう」
ぐるぐる思考の特徴は次の3点です。
- 同じこと・解決のないことを延々と繰り返す
- 結論は常にネガティブな不安や危惧に偏る
- 止めようとしても止められない
これが夜な夜な起こっていれば、当然眠れません。体が疲れていても、脳は活動を続けている状態だからです。
なぜ医師でさえ不眠は簡単に解決しないのか
医師であっても、不眠の解決は簡単ではありません。私自身、幼少期に強い不眠を経験し、スポーツを始めて日中に体を動かすことで眠れるようになりました。しかし医師として働き始め、スポーツの機会が減り、職場の強い精神的ストレスが日々の中心になると、再び不眠が襲ってきた経験があります。
その頃には気づいていました。運動や生活習慣を整えても眠れない。子どもの頃の一般的な対処法だけでは限界がある——と。
医師として、整形外科的には「症状を和らげる」よりも「根本から取り除く」という発想を持ってきました。その考え方を睡眠にも応用する必要があります。
ぐるぐる思考へのアプローチ——5つの視点
1. 思考を「書き出す」
頭の中でぐるぐる回っている内容を、紙に書き出します。外に出すだけで、思考の勢いが弱まることがあります。
2. 「解決可能」と「解決不可能」を仕分ける
書き出した内容を、今すぐ行動できるものと、考えても仕方ないものに分けます。解決不可能な心配に時間を使わない訓練です。
3. 「明日のタスク」を紙に預ける
「明日やること」は、寝る前にメモに書いて机に置く。脳に「覚えておかなくていい」と伝えることで、思考が休まります。
4. 「Do」ではなく「Be」を意識する
「何かをする」ではなく、「ある状態で在る」ことを意識する。眠ろうと頑張るのではなく、眠らなくてもいいと許可するほうが、結果的に眠れることが多いのです。
5. 専門家と対話する機会を持つ
一人で抱え込むと、ぐるぐる思考は加速します。信頼できる第三者と話すだけで、思考の出口が見えることがあります。
「Thrive(自然に輝ける状態)」という発想
英語には「Thrive(繁栄する・のびのび生きる)」という言葉があります。日本語に完全に同じ意味の言葉が存在しないのが印象的です。
これを「自然に輝ける状態」と表現することができます。
ここで大事なのは、「頑張って明るくふるまう」ことでもなく、「頭で考えて幸せになろうとする」ことでもありません。ただ自然に「幸せだ」と感じられる状態になることです。
Do(何かをする)ではなく、Be(その状態である)。この感覚を取り戻すことが、実は不眠の根本対処にもつながります。
まとめ——眠りは心と体の調和そのもの
- 日本人の約5人に1人が睡眠の悩みを抱えている
- 生活習慣改善だけで解決しない不眠がある
- 原因は「ぐるぐる思考」=反すう思考
- 書き出す・仕分ける・紙に預ける・Beを意識する・専門家と話す
- 眠りとは、心と体の調和そのもの
眠れない夜は、体と心が同時に整っていないサインです。習慣や非医療的対処、必要に応じた医療的対処に加えて、「根本的に心を安堵させる方法」を持っているかどうかが、長期的な睡眠の質を左右します。健診のあとに、自分の眠りの背景にある思考の状態も点検してみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・診断の代替ではありません。不眠が強い場合は、睡眠外来、精神科、心療内科などの専門医療機関にご相談ください。
▶ 出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
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最終更新:2026年4月
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