経営者の不調を「気合い」で乗り切る時代は終わった——新年の思考整理から始める
この記事のポイント:年が明けて「今年こそは」と決意する経営者は多いものですが、その決意が「気合いと根性」に頼っていると、昨年と同じ結末を迎えます。Awarefyの調査では経営者の約半数が心の不調を経験し、実際にケアできているのは3割以下。新年という節目に、気合い以外の選択肢を経営者の立場から整理します。
新年に「今年こそは」と決意する前に——昨年と同じ結末を避けるために
1月は、多くの経営者が新年の目標を立てる季節です。しかし、その目標の実現可能性を左右するのは、壮大なビジョンではありません。自分自身の心身の状態が、昨年と何が変わったかです。
「今年こそは健康管理をしっかりやる」「今年こそはメンタルを整える」——こうした決意が3月までに消えていく経験は、多くの経営者に共通しています。
原因は意志の弱さではありません。アプローチの前提が間違っているのです。
「気合いで乗り切る」が失敗する構造的理由
経営者の多くは、これまでのキャリアを「気合いと根性」で切り拓いてきた方です。資金繰りの苦しみ、人材の悩み、競合との戦い——どれも精神力で乗り越えてきた歴史があります。
だからこそ、心身の不調も「気合いで乗り切れる」と考えがちです。しかし、メンタルや身体の不調には「気合い」が通用しない構造があります。
- 筋肉疲労は気合いで治らない
- 睡眠不足は気合いで補えない
- 慢性ストレスは気合いで解消しない
- 判断疲れは気合いで回復しない
むしろ気合いを入れるほど交感神経が優位になり、回復機能そのものが低下するのです。
データが示す現実——経営者のメンタル事情
株式会社Awarefyの調査(2023年)は、経営者のメンタル実態を明らかにしています。
- 経営者の約半数が「心の不調」を経験
- 不調要因の45.1%が「資金繰り」、44.4%が「将来の見通し」
- メンタルケアの必要性を感じている経営者は6割以上
- 実際にケアを実施している経営者は3割以下
「知っているが動けない」——この状態は、意志の弱さではなく構造の問題です。
厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の65.3%が「ストレスチェックの実施」を挙げています。しかし経営者自身は、この制度の対象ではなく「実施する側」。制度の外に置かれているのです。
「気合い以外の選択肢」を3つに分解する
1. 身体面——回復機能を科学的に支える
睡眠、食事、運動。この3つの基本を、経営者の生活リズムに合わせて最適化します。「平均的な健康法」ではなく、経営判断の質を保つための個別化が必要です。
2. 思考面——判断疲れと感情消耗を減らす
経営者は一日に数百の判断を下します。判断のひとつひとつにエネルギーを使う人と、整理された思考でこなす人では、夕方の疲労度がまったく違います。思考の「型」を整えることが、持久力を生みます。
3. 環境面——相談できる関係性を持つ
経営者の孤独は構造的なものです。家族には話せない、同業には話せない、部下には話せない——。経営判断と地続きの自分の状態を話せる相手が一人もいない状況は、メンタルの不調を加速させます。
新年に設計したい「健康経営」の出発点
多くの経営者が「健康経営」を従業員向けの取り組みと捉えていますが、本来は経営者自身の健康から始まる概念です。
新年に設計すべきは、次のような順序です。
- 自分の「疲弊パターン」を書き出す
- どこで消耗しているか(身体/思考/環境)を特定する
- 気合いで乗り切ろうとしていた領域を一つ選ぶ
- その領域で「気合い以外の対処法」を一つ試す
- 1ヶ月後に効果を振り返る
大きな改革ではなく、「ひとつだけ変える」から始めるのが、新年の決意を継続させるコツです。
まとめ——今年を昨年の繰り返しにしないために
- メンタルや身体の不調に「気合い」は通用しない
- 経営者の約半数が心の不調、実際にケアできているのは3割以下
- 身体・思考・環境の3面で同時にアプローチが必要
- 「ひとつだけ変える」から始めるのが継続のコツ
新年の決意を現実にする第一歩は、気合いに頼らない仕組みを作ることです。健診のあとに数値を点検するのと同じように、自分の疲弊パターンを定期的に見直す習慣を、今年から始めてみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医療行為・診断の代替ではありません。体調や心身の不調が強い場合は、必ずかかりつけ医または専門医にご相談ください。
▶ 出典
・株式会社Awarefy「経営者のメンタルヘルスに関する調査」(2023年)
・厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」
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最終更新:2026年4月
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